2018/10/21
前回記事の「腐りきっている脱毛症・AGA治療業界 その1」では、腐りきったAGA業界の医療広告問題とカウンセラー問題を取りあげました。今回はその続きです。
目次
AGA治療専門クリニックのオリジナル発毛薬
「AGA専門クリニックや美容外科のオリジナル発毛薬の内容と問題点」でも書いていますが、今回はより具体的に書いていきます。
AGA治療専門クリニックでは、しばしばそのクリニック独自のオリジナル発毛薬を処方しています。その内容をひとつずつ見ていきます。
Aクリニックのオリジナル発毛薬
1.ミノキシジル4mg + フィナステリド1mg (2種類の薬を合わせた合剤、または、単剤ずつ)
2.ミノキシジル8mg + フィナステリド1mg (2種類の薬を合わせた合剤、または、単剤ずつ)
上記はよくあるパターンですが、ミノキシジルは海外では2.5mg錠、5mg錠、10mg錠のPTPシートになっているものが製品としてあります。
オリジナル医薬品を作るには、法律上自院(自分のクリニックのみ)で作り、自院内で使うことが原則です。国内の製薬会社は、未認可の医薬品を製造しませんから、AGAクリニック向けに、国内の製薬会社でオリジナル発毛薬は製造されていません。また、自院で作った薬を、他院に販売したり譲渡したりすることもできません。製薬業の免許を持っていない会社が、オリジナル医薬品を製造することも法律上禁止されています。
オリジナル発毛薬の問題点として、いろいろとありますが、まず、自院のクリニック内で作った医薬品以外を使っているケースがあります。製薬業の免許を持っていないところで作ったり、他のクリニックから購入したりするケースです。これは法律上認められていません。
次に自院のクリニックで作る場合ですが、医薬品輸入代行業者に内情を聞くと、ミノキシジルの原料から製剤しているわけではなく、海外で製品化されているミノキシジル錠とフィナステリドを一度壊して、混ぜ合わせ、再度固めて製剤化して、オリジナルパッケージに詰め直しているところが沢山あるということです。
ミノキシジルやフィナステリドの原価は非常に安く、海外では日本の5分の1~の価格で処方されています。オリジナルにすることで、価格を安くでき、患者へ転嫁できるのであれば、それはそれで構いませんが、私が知っている限り、オリジナル発毛薬を処方しているAGAクリニックは、安くするどころか、逆にとんでもなく高価な価格で患者へ処方しています。
なぜ普通にある薬をオリジナル発毛薬にするのか?
海外に安価で、パッケージ化された製品があるのにも拘わらず、なぜそれをまた、パッケージングし直して、オリジナル発毛薬として売るのでしょうか?
それは、オリジナル発毛薬とすることで、薬の内容を患者さんへ分かりにくくし、他院と比較されないようにするためというのが一つの理由です。薬の内容がわかれば、インターネットで検索してもっと良心的なクリニックを見つけるでしょう。当院へ来院した患者さんに、他院で処方されていたオリジナル発毛薬の内容を聞くと、「どんな薬か良く分からないんです。良く説明も受けませんでした。」と言われる方は非常に多いです。
また、オリジナル発毛薬の説明書をもらったという患者から、その説明書を見せてもらうと「Minoxidil, Finasteride」などと英語で書かれており、患者にとって非常にわかりにくい説明文書となっていました。患者へ渡す薬の名前を、わざわざ英語にする理由は、いったい何なんでしょう(患者に薬の内容を分かりにくくしているだけです)。
もう一つ、オリジナル発毛薬として処方することで、付加価値を付けて利益を出すために他なりません。オリジナル発毛薬を作ることで、安価になればいいのですが、たいてい高価な価格で処方されることになるので、まったく患者のためにはなりません。
ひどいところだと、国内で認可されている「スピロノラクトン」をオリジナル発毛薬として処方しているクリニックもあります。スピロノラクトンは、抗男性ホルモン作用があり、女性のびまん性脱毛などによく使われるお薬です。
国内でも古くから使用されており、脱毛症に保険適応がないので、自費診療となりますが、それでも安価な薬です(薬価は約10円、当院では1錠30円で処方しています)。
女性の患者さんで、AGA専門クリニックと謳っているクリニックに通院している方が当院へ来院され、月に3万円で処方されているという薬の内容を見せてくれました。それは、下記の薬でした。
Bクリニックのオリジナル発毛薬
1.ミノキシジル2mg
2.スピロノラクトン25mg
上記の薬をわざわざオリジナルパッケージにしてあります。使用している薬はミノキシジルとスピロノラクトンなのに、わざわざオリジナルの医薬品名がパッケージに書かれています。一緒にもらったという薬剤説明書の薬剤名の欄には、「minoxidil」、「spironolactone」とやっぱり英語。
なぜわざわざ、国内で販売されている安価なスピロノラクトンをオリジナルパッケージにして、高価なものにして、患者へ処方する必要性があるのでしょうか?(利益がないとクリニックの経営が成り立たないのはわかりますが、わざわざ変なことをして、クリニックの利益を上げることばかり考えて、何やってるんだか、という感じです。)
自分で飲んでいる薬をしっかり確認しよう
AGAクリニックは、本当にいい加減なクリニックが多いです(もちろん、真面目でまともなクリニックも沢山あるでしょうが、それ以上にいい加減なクリニックが多いという印象です)。
一部のチェーン展開しているクリニックの医師は、バイト医師が多いせいか、薬の知識も乏しく、患者への説明もいい加減なことがあります(もちろん全部ではありません。一部と言っておきます)。
自分が処方されている薬については、しっかりと医師に確認し、自分でも調べるようにしましょう。