2018/10/21
アボルブ（一般名デュタステリド 海外ではアボダート、デュタス）薬は、2009年に前立腺肥大症の治療薬として日本で認可されました。泌尿器科医の間では、アボルブの副作用に頭髪の多毛があることはよく知られていました。作用機序としては、プロペシアと同様に5α-還元酵素を阻害することにより、男性ホルモンがDHT（ジヒドロテストステロン）に変換するのを阻害します。DHTは脱毛だけでなく、前立腺を肥大させるため、DHTの生成を阻害することにより、前立腺を縮小させます。
ザガーロはまだ未発売ですが、アボルブと有効成分は全く同じデュタステリドで、「男性における男性型脱毛症」の効能・効果を取得した製剤です。デュプロストも全く同じデュタステリドで、インドのシプラ社が製造しているジェネリック医薬品です。
プロペシアはⅡ型5α-還元酵素のみを阻害するのに対し、ザガーロはⅠ型、Ⅱ型5α-還元酵素を阻害します。そのため、医師や研究者の間では、プロペシアよりも有効ではないかと言われてきました。両者を比較した試験は、多くありませんが、幾つか発表されています。
A randomized, active- and placebo-controlled study of the efficacy and safety of different doses of dutasteride versus placebo and finasteride in the treatment of male subjects with androgenetic alopecia.[J Am Acad Dermatol. 2014]
中規模の試験ですが、20歳～50歳までのAGA男性917人を対象としており、比較試験としては十分参考になる規模で実施されています。毎日デュタステリド（ザガーロ）0.02mg、0.1mg、0.5mg、フィナステリド（プロペシア）1mg、プラセボのそれぞれを飲む群で、24週に渡って効果を見ています。単位面積当たりの毛髪数は有意にザガーロ0.5mg＞プロペシア1mgという結果となり、副作用の発現率は変わらなかったという結果になっています。もう一つ論文を紹介します。
The importance of dual 5alpha-reductase inhibition in the treatment of male pattern hair loss: results of a randomized placebo-controlled study of dutasteride versus finasteride.[J Am Acad Dermatol. 2006]
この試験は21歳～45歳の416名の被験者を対象に、毎日デュタステリド（ザガーロ）0.02mg、0.1mg、0.5mg、2.5mg、フィナステリド（プロペシア）5mg、プラセボのそれぞれを飲む群で、２４週に渡って効果を見ています。だいぶ端折りますが、結果は毛髪数（増毛数）、血清DHT濃度、頭皮DHT濃度いずれでも、ザガーロ2.5mg＞ザガーロ0.5mg＞プロペシア5mg＞ザガーロ0.1mg＞ザガーロ0.02mgという結果になっています。全ての群で、副作用に有意差はないという結果でした。プロペシアは現在使用されている1mgのものではなく、5mgのものが使用されています。プロペシアは、5mgと1mgとでは比較試験はされていないものの、他の試験で1mgと0.2mgとでは1mgのほうが効果が高いことが示されていますから、ある程度は容量依存性に有効性が上がることが示唆されます。ザガーロも、使用されるのは2.5mgではなく0.5mgですが、この試験でプロペシア5mgよりもザガーロ0.5mgのほうが効果が高かったという時点で、ザガーロ0.5mg＞プロペシア1mgはほぼ間違いなさそうです。上記の試験で、プロペシア5mgとザガーロ0.1mgでは、プロペシア5mg＞ザガーロ0.1mgでしたが、有意差がほとんどなかったことを考えると、次の図式が成り立ちます。プロペシア5mg＞ザガーロ0.1mg≧プロペシア1mg
上記の２つの中規模試験のまとめとして（一部推察も入っていますが）、
ザガーロ2.5mg＞ザガーロ0.5mg＞プロペシア5mg＞ザガーロ0.1mg≧プロペシア1mg＞ザガーロ0.02mg
という結論（一部推察）になります。次回へ続きます。
