AGAブログ | 肌のクリニック・高円寺院・麹町院

AGA治療専門の皮膚科医師のブログです。男性型脱毛症、薄毛、女性のFAGA治療や、発毛と育毛に役立つ知識を、医師の視点から発信しています。育毛業界の裏側や、問題点に対してもメスを入れていきます。

AGA専門クリニックや美容外科のオリジナル発毛薬の内容と問題点

time 2015/10/11

美容外科やAGAクリニックでは必ずと言っていいほど「オリジナル発毛法」や「オリジナル発毛薬」というメニューがあります。自費診療の分野なので、オリジナルの治療法があってもまあ悪くはないのですが、本来の医学の流れからすると、おかしな点が多くあります。

例えば喘息の発作で来院された患者さんに対して、A病院では吸入薬を使い、B病院ではステロイドの点滴を行い、C病院では気管支拡張薬の点滴を行うといった、それぞれ異なったオリジナルの治療を行われてしまうと、患者さんは非常に困るわけです。

本来、喘息発作の治療は重症度によって決まっており、どこの病院に行っても最も効果がある治療を、同じように受けられることが、患者さんにとって理想です。それがEBM(Evidence based medicine)と呼ばれる「治療結果の根拠に基づいた医療」です。そのために、様々な疾患に対してガイドラインが作成されています。

AGA治療にもガイドラインがありますが、残念ながらAGA治療に本気で取り組んでいる医師は全国にはまだまだ少なく、ガイドラインが周知されていません。また、日本で認可されている薬が少ないために、ガイドラインでは対応できない部分もあります。そういった未熟な分野であるがゆえに、一部の育毛用品業界、育毛エステやサロン、AGAクリニックなどの金儲けの温床になってしまっている感は否めません(もちろんすべてのクリニックがそうではなく、一部ですが)。

美容外科やAGAクリニックで使用されているオリジナル発毛薬の内容とはどんなものなのでしょうか。ほとんどのクリニックは以下のような内容の薬を「オリジナル発毛薬」として謳っています。

フィナステリド+ミノキシジル

この2つの薬が混合されているだけです。フィナステリドは海外製のプロペシアジェネリックを使用し、ミノキシジルはミノキシジルタブレットを使用しています。量はどうでしょうか?常識的に考えるとフィナステリド1mgとミノキシジル5mg(もしくは10mg)を1日量(1日1回であれば全量、1日2回であれば半量)としていると考えられます。また、とあるクリニックではミノキシジル内服を2mgもしくは、4mgとしているようです。デュタステリド(アボルブ)を混合している可能性もありますが、デュタステリドはカプセル内に液体として入っており、他剤との混合が難しい薬剤ですので、上記の薬でほぼ間違いありません。実際に何人かの患者さんから見せてもらった他院のオリジナル発毛薬は上記の2剤でした。この2剤を用いて「当院のオリジナル発毛薬はすごい発毛効果!」と宣伝していたり、ステマサイトに「〇〇クリニックのオリジナル発毛薬は今までの治療と全く違った効果!値段は高いが物凄い発毛率なので納得!」などと宣伝させていたりします。ミノキシジル内服薬は、現存する治療薬の中で最も高い発毛効果がありますので、そのクリニックのオリジナル発毛薬の効果が高いのではなく、ミノキシジル内服薬(ミノキシジルタブレット)の効果が高いだけですので騙されないようにしてください。

なお、ミノキシジルタブレットは副作用も強く、美容外科の医師の中にはそのような副作用を患者さんへ説明していなかったり、副作用チェックを怠っている医師もいますので、この点も注意してください。ミノキシジルタブレットの副作用については「ミノキシジルの副作用 心血管系を中心に」をご参照ください。

この2剤を主剤として、リジンや亜鉛などの微量元素やビタミンなどのサプリメントを混合しているクリニックもありますが、主な薬効はこの2剤によるものです。この2剤を粉砕機で粉状にしてカプセルに詰め、クリニックオリジナルのパッケージまで作って、わざわざそれに詰め替えて処方しているクリニックもあれば、この2剤を粉砕して、一包化してビニール袋に入れて処方しているクリニックもあります。

そしてここからが問題提議なのですが、なぜフィナステリドとミノキシジルをそれぞれ処方すればよいのに、わざわざ粉砕したりビニール袋に入れて一包化したりするのでしょうか?「一つにまとめれば、患者さんが飲みやすくなる。高血圧の薬も今は2種類が混ざった合剤として出ているではないか。」と反論する医師もいるかもしれません(まあ、痛いところを付かれているので、そのような反論をする医師はいないと思いますが)。しかし、市場に出ている合剤は有効成分A15mg+有効成分B30mgといったように、きちんと患者さんへも情報開示がなされていますが、オリジナル発毛薬と謳って処方されているものに関しては、有効成分や用量を開示していない、もしくは患者さんが聞いても教えてくれないといったことがほとんどのようです。

「料理でもなんでも、秘伝のたれやレシピがあるじゃないか!企業秘密だから教えられないものは教えられないんだ!」と言われるかもしれませんが、患者さんへ処方する内服薬と他のものを一緒にしてはいけません。サプリメントならまだしも、薬効成分と副作用がある薬剤ですので、きちんとした医学的な情報提供と副作用説明をする責任が我々医師にはあるはずです。

問題提議に戻りますが、なぜフィナステリドとミノキシジルをそれぞれ処方すればよいのに、わざわざ粉砕したりビニール袋に入れて一包化したりするのでしょうか?これは、内容を患者さんへ分かりにくくし、オリジナル発毛薬として付加価値を付けて利益を出すために他なりません。そして、患者さんへ情報提供をしないのは、恐らく他のクリニックに真似されるのを恐れているか、内容がわかれば高いものだと患者さんへ気づかれてしまうのを恐れているか、ということでしょう。

もちろん利益を出すことは悪いことではなく、当院も含めて医療機関は利益がないとやっていけないわけです。ただ、きちんと有効成分や量を開示してオリジナル発毛薬1ヶ月分2万円などと書かてれいるのであれば、特に問題はないと考えますが、上記のように患者さんが聞いても内容を教えないクリニックがあったり、医学的情報提供がなされていないケースが非常に多く、その点で問題があると考えています。

医師のモラルはいったいどこへ行ってしまったのでしょうか。

※上記はすべてのクリニックに対して言っているわけではなく、私が過去に診察した患者さんから得た情報を元に書いています。オリジナル発毛薬を処方しているクリニックでも、きちんと内容を患者さんへ説明し、必要な情報提供や副作用説明をしているクリニックもあるのかもしれません。

書いている人

医師 岩橋 陽介

医師 岩橋 陽介

東京の皮膚科・美容皮膚科「医療法人社団 肌のクリニック」の院長をしています。当院勤務の美容皮膚科医にも時々記事を書いてもらっています。 [医師紹介]

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