2018/10/21
AGAとはあまり関係ない話題ですが、昨日、TBSで「包茎手術で必要のない施術を追加され、高額請求されたとクリニックを相手取り、2人が東京地裁に提訴した。」というニュースが流れていました。
上記のクリニックについては内情を知らないため言及しませんが、包茎手術をやっているクリニックの中には、非常に怪しいクリニックが山ほどあり、利益至上主義のどうしようもない医師が沢山います(もちろんまともな泌尿器科の先生も沢山おられます)。
包茎手術の問題は業界では有名
昔から美容外科、美容医療界隈では上記のことは有名で、「包茎手術一律5万円!」などと謳っているクリニックで手術したところ、いざ当日になって
- 「カントン包茎だから特別な手術が必要です。」
- 「亀頭にブツブツがあるから、レーザーで取らなければどんどん広がってしまう。一緒に取ってしまいましょう。(実際にはフォアダイスと呼ばれる良性のもので、放っておいても問題ない)」
- 「亀頭が小さいから、皮を切ってもまた戻ってしまう。亀頭を大きく必要があるのでヒアルロン酸を入れましょう。」
などと言われ、5万円だけのつもりだったのにあっと言う間に100万円を超える費用になったという話はざらにあります。酷い悪徳医師は、手術中に次々と追加手術を勧め、患者は下半身丸出しの状態で手術台の上にいるので、まさに「まな板の上の鯉」状態で、医者に言われるがままに治療を受けてしまうケースがあります。
患者さんの中には、手術中に想定外のことが起こったのだから、追加手術もやむなしと思う方もいるかもしれません。しかし、実際には手術中に想定外の出来事が起こって追加手術をしたわけではなく、必要のない手術を単に金儲けのために追加しているに過ぎません。そして、拝金主義のクリニックはほとんど全例の患者に追加手術を勧めています。
だいたい、包茎手術を何百~何千例も行っている泌尿器科の専門医は、当然、手術中に起こるリスク、副作用を想定して、必要な治療を術前にしっかりと説明します。それが、事前の診察では何の説明もなしに、想定外の出来事が起こった!追加手術が必要だ!なんていうのは、単に施術費用を患者からむしり取るためだけの口実に過ぎません。
包茎手術後の合併症でさらに有害
悪徳クリニックで勧められる手術は、そのほとんどが本来包茎手術には必要がないものなので、通常の包茎手術よりも様々なリスクを伴います。
国民生活センターへ届けられた被害報告では、
- 「ペニスの一部が壊死(えし=腐る)してしまった。」
- 「術後の傷口がふさがらずパックリとあいたままになっている。」
- 「射精ができない。」
- 「排尿が困難に。」
など、深刻なものがあります。主な相談事例を見ると、包茎手術そのもののトラブルというより、追加で勧められた長径術や亀頭増大術による合併症であることがわかります。自費診療の美容外科医師のトラブルが多く、包茎治療は美容外科や包茎手術の広告ばかり打っている美容クリニックをまず避けて、保険診療の泌尿器科へ行くべきです。
高い治療だから安心、何万例も症例があるから安心ということはありません。とくに、大々的に広告をしているチェーンクリニックは、アルバイトの医師で回しているところもあります。(もちろん優秀なアルバイト医師もいるでしょうが、ほとんどがダメ医者で、泌尿器科医ですらない医者もいます。)
今回のように提訴したり、国民生活センターへ報告したりする患者さんは氷山の一角で、性器の問題はその恥ずかしさから誰にも相談ができず、沢山の患者さんが泣き寝入りをしていると思われます。
包茎手術はどこで受けるべきか
真性包茎の場合は、包茎手術は健康保険が適用になりますので、手術費用は高くありません。仮性包茎の場合は機能的に何の問題もないため、手術による性感の低下や合併症を考えると、亀頭包皮炎などを繰り返す場合を除き、手術の必要はありません。
包茎手術を専門に行っている悪徳な美容外科は、真性包茎では保険が適用されることを患者に説明せず、高額な医療費を吹っ掛けてきます。また、先の述べた、3万円!5万円!などと広告しておいて、実際には追加費用で100万円~200万円を取るというケースがあります。
仮性包茎の場合、そもそも手術は必要ないはずですが、仮性包茎は汚い、醜い、恥ずかしいなどというイメージを植え付け、手術しなければならないと患者へ思い込ませるような広告をしているクリニックがあります。そのようなイメージ広告をしているクリニックは、患者のコンプレックスに付け込んでいるわけで、良いクリニックのはずがありません。まず避けるべきでしょう。もちろん、仮性包茎でも本人が手術を希望していれば手術をするのは構いませんが、それでも事前にしっかりとした説明、料金の開示をしているクリニックを選びましょう。
きちんとした美容外科ももちろんあるので、一概には言えませんが、私からのおすすめは、真性・仮性問わず、
包茎手術は保険診療をしている泌尿器科専門医にまず相談する。ということです。美容外科に行くのはその後で十分です。
「保険が効く手術だと傷跡が汚くなり、美容外科だと傷が目立たない!」
「安い手術だと傷が汚くなるから、特別な縫合方法でやりましょう!」
なんて説明しているクリニックがあるようですが、大嘘ですので、そんな病院や診療所は真っ先に避けてください。
必要を受けるかどうかの判断
仮性包茎の場合は、手術の必要はありませんが、包茎が治ることによるメリットも当然あります。なので、治療が必ずしも必要でなくても、患者さんが選択すれば手術を受けても良いと思います。ただし、それは手術によるデメリット、リスク、合併症、治療費とメリットを天秤にかけて患者さん自身で決めることです。
事前に費用や副作用、想定される追加施術の説明がされていないケースでは、患者さんは十分な情報を医師から得ることができず、治療の是非を検討することができません。そのような状況で、手術を行った場合、非常に問題です。
当院のAGA治療に照らし合わせて見ると、薬の副作用、費用、通院時間などのデメリットと、治療によって得られるメリット(効果、安心感など)を天秤にかけて治療をうけるかどうかを決定すべきです。私の場合は、副作用や有効性などを説明した後は、治療を受けるかどうかは患者さんへ委ねます。
副作用などを過度に気にされている方には、
「薄毛でも気にしていない人もいますし、内面的な価値が落ちることもありません。副作用が気になるようであれば、治療を必ずしも受ける必要はありません。」
と説明しています。
受け身の診療ですが、AGAの治療は必ずしも必要なものではないため、やはり患者さんが希望するかどうかが大切なポイントです。
先日はシミ治療でいらした女性の患者さんに対して、レーザー治療や費用の具体的な説明を行い
「シミを全部取ってしまうことは可能ですが、顔全体にあるのでこれだけの料金がかかります。シミは絶対に治さないといけないものではありませんから、家でよく考えてきてから治療を受けるか決めてくださいね。」
と説明しました。自費診療はある程度高額になるため、いつも患者さんの希望に任せるのみで、積極的に勧めることはしていないのですが、患者さんから、
「私はきれいになる必要はないということでしょうか?」
と言われてしまいました。患者さんにとっては「私はシミを取って奇麗になりたくて来ているのに!」という思いがあったのでしょう。
一緒に診察に入っていた涌水先生からも「先生、美容医療なんですから普通はもっと積極的に治療を勧めますよ。」と言われてしまい、もう少し患者さんの気持ちを考えて説明すべきだったなと、あまりに受け身すぎる診療も良くないと反省した1日でした。