2018/10/21
以前、ミノキシジル外用剤の有効性について詳しくブログに書きましたが、今回はミノキシジルタブレット(内服薬)の有効性についてです。
ミノキシジル外用剤の有効性については「ミノキシジル外用剤の発毛効果・有効性」を参照してください。
ミノキシジルタブレットの効果・効能
血圧の薬として使用されていた内服薬(ミノキシジルタブレット)の副作用で、飲んでいた患者さんの髪や体毛が生えだし、濃くなったことで、発毛剤として応用されるようになりましたが、ミノキシジルタブレットの副作用をできる限り減らす目的で、ミノキシジルを溶液化して外用剤として製剤化したのが、大正製薬の「リアップ」や、アメリカの「ロゲイン」です。
効果の強さは内服>>>外用となります。頭皮、特に前頭部は、皮膚のバリアがあるため、外用剤を5%~15%の高濃度で塗っても、毛包まで届く量はごくわずかです。内服の場合は、全身の血流に乗って頭皮の隅々まで届くわけですから、強力な発毛作用を発揮します。
しかし、全身に影響を与えますので、全身の毛が濃くなるなどの副作用があり、また以前このブログでも書いたように、心臓血管系にも副作用がでることがあります。そのため、外用剤は発毛剤として認可されていますが、内服剤は発毛剤として認可されていませんので、ミノキシジルタブレットを使用した大規模な研究はされていませんが、当院の経験上、現存する治療薬の中では最も発毛効果が高いもののひとつであると言えます。
ミノキシジルの副作用についてはこちら
実際の臨床例
患者さんの許可を得て、実際の写真を用いて当院での治療を説明します。
症例
40代後半の男性。高血圧、糖尿病、高脂血症などの持病はなく、喫煙歴もないことから、心血管系のリスクはなく、また他院で以前2年ほどミノキシジルの内服をしたことがあり、その際にも副作用は認められなかったとのことから、ミノキシジルタブレットの治療を選択しました。下の写真は初診時の写真です。頭頂部を中心に、後頭部~前頭部まで地肌が透けて見えています。
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治療経過1
初診時に心電図、血液検査(心不全のマーカーであるpro-BNPも含む)、尿検査を行いました。検査では異常を認めず、ミノキシジルタブレット5mg、フィナステリド1mgを1日1回で処方を開始しました。下の写真は2か月後の写真です。髪を染めたため黒くなっていますが、カメラは同じ条件で撮影しています。2ヶ月で地肌はほとんど目立たなくなり、髪のボリュームも増えています。
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治療経過2
十分に効果が得られていたため、フィナステリドの内服はそのままで、現在はミノキシジルタブレットを5mg→2.5mgへ減量していますが、髪の状態は良好です。当院では、初診時、3ヶ月後、その後は半年に1回は心電図、血液、尿検査を行い、防げる副作用は未然に防ぐようにしています。
後記
治療を開始してから最初の1ヶ月は、毛が生え変わるために休止期の毛が脱毛して抜け毛が多くなります(初期脱毛)。AGAが急に進行したように感じて驚いてしまう患者さんもいますが、初期脱毛があっても、気にせずに治療を続けるように説明しています。この患者さんは2ヶ月で改善しましたが、髪の毛の周期は3年~と長いため、効果が出るまで、通常は平均して6ヶ月程度かかることを説明しています。また、改善が著しい場合は、診察の際に徐々に薬の用量を下げていき、より安全性を高めるようにしています。
発毛薬と脱毛抑制薬を併用したほうが効果は高く、脱毛抑制薬は、頭頂部型のAGAの場合はフィナステリド、前頭部型や全頭型のAGAの場合ではデュタステリドを選択しますが、患者さんの希望や副作用のリスクを天秤にかけながら判断します。