AGAブログ | 肌のクリニック・高円寺院・麹町院

AGA治療専門の皮膚科医師のブログです。男性型脱毛症、薄毛、女性のFAGA治療や、発毛と育毛に役立つ知識を、医師の視点から発信しています。育毛業界の裏側や、問題点に対してもメスを入れていきます。

チャップアップには発毛効果はありません | おかしな育毛剤1

time 2015/03/23

育毛ケア用品は、ほんとに次から次へ出てきますよね。子供の頃の思い出としては「101」という中国の育毛剤が記憶に残っています。1980年代に登場した育毛剤で、「イチマルイチ」[ワンオーワン」という呼び名であっという間に大ブームとなりました。なんでも中国の漢方医が、漢方薬から作り上げた発毛剤で、発毛率97%という驚異的な数値を引っさげて宣伝したこともあり、爆発的な人気となったのです。いろいろなメディアに取り上げられたこともあり、日本ではまず入手困難で、「中国へ毛生え薬101を買いに行こうツアー」まで開催されました。当時、私はまだ小学生でしたが、父が「101を手に入れた!」と喜んでいたのを思い出します。確か記憶では、中国では1本5000円くらいで売っており、日本では、その3倍の15000円くらいの高値で取引されていたと思います。父の知り合いが中国へ行って直接買い付け、3本だけ入手できたとのことで、それを父が分けてもらったようです。小学生だった私は、親のAGAなぞにはあまり興味がなく、「ふ~ん、生えたらいいね。」というくらいにしか思っていませんでした。確か、ちょっと黄色というかオレンジがかった色をした、臭い液体だったと思います。毎日毎日父は101を塗っていましたが、全く頭髪に変化はなく、そのうち101の話すらしなくなってしまいました。101の謳う発毛率97%は、当然ただの宣伝文句であり、ほとんど効果がある人はおらず、また臭いがきついことや、頭皮にかぶれや発疹が起こるなどの副作用もあって、急速にブームは沈静化していき、その後は101の話題を聞くことは無くなりました。

育毛ケアの市場は、非常に大きな市場です。医薬品以外の化粧品や医薬部外品で育毛効果を謳う製品は、国内だけで573億円の売上(2013年)があり、年々増加しています。それだけ大きな市場だからこそ、闇が非常に深いと思います。誇大広告を打って、実際には効果が乏しい製品を売ったとしても、一時的にでもブームになれば巨額の利益をあげることが出来ます。「騙されたと思って3ヶ月お試しください!」とか「3ヶ月で98%の方が効果を実感!」などの宣伝文句はまさに、一時的な売上を狙う際の常套句です。また、「30日以内全額返金保証!」も、実際には1ヶ月じゃ効果は分かりませんよ!と説明をし、消費者にもっと長く使わせるように仕向けるため、30日以内で返金してもらおうという意欲が削がれ、結局はだらだら3ヶ月程使い続ける事となります。AGAに悩む方はおおよそ1300万人とも言われ、もしもその中の5%の65万人が、1万円の育毛剤を1回買ったとしたら、それだけで売上は65億円になります。1%の人が1回買っただけでも、売上は13億円です。そして、育毛剤は1本で終わりにする方は少ないことを考えると、業者としては誇大広告を打ってでも、大きなブームを作り出し、たとえ一発屋でもいいから利益を上げて、その後は実際に広告ほどの効果が出なくても、知ったこっちゃないというスタンスなのでしょう。さらに悪質な業者は、一度ヒットした育毛剤が売れなくなれば、またパッケージと名前を変えて、同じ育毛剤をあたかも違う製品のようにして売り出します。そして、また一発儲けて、そのブームが終わったら、また新しい育毛剤(というか内容は同じ)というふうに、儲け続けていくわけです。その間には、会社名も変わるので、消費者はまさか同じ育毛剤だとは思わないわけです。もちろん、発毛、育毛に真摯な態度で取り組んでいる、まじめな会社もあることは知っています。しかし、私が見る限りは薬事法違反の広告をバンバン出して、大々的に誇大広告を出し、ブームが収束したら立ち去るという手法が非常に目につきます。

本当はこのページでは、書きたい情報が山ほどありますが、個別の商品への批評を一つ一つしていくのは、非常に時間がかかりますので、ざっくりとだけ書こうと思います。まず、押さえておきたい基本中の基本ですが、医薬部外品の効果が医薬品を超えることはありません。よく「ミノキシジルの3倍の効果!」や、「ミノキシジルより副作用が少ない!」などと謳われた広告がありますが、これは完全に薬事法違反ですし、100%嘘です。もしも、仮に本当であれば、ミノキシジルと自社製品との比較対照試験(ダブルブラインド試験)を行って優位性を示せば、医薬品として登録が可能となりますし、また現在ミノキシジルが独占している巨大なAGAの市場を奪うことが出来ます。リアップだけで、国内でも毎年100億円以上の売上をあげています。世界中のミノキシジルの売上はおそらくその5倍以上でしょうから、自社製品がミノキシジルより効果があるのであれば、臨床試験をやらない手はありません。また、試験をやるお金がないからやらないという企業の言い訳もあるようですが、もしもミノキシジルより効果があり、副作用が少ないのであれば、スポンサーが名乗りを上げないわけがありませんので、まずそのような言い訳を100%信用しないほうがよいでしょう。基本の次に、もう一つ、ステマサイトがある会社のものは買ってはいけません。最近はステマサイトやアフェリサイトも非常に巧妙で、ネガティブな情報を消費者が調べようと思っても、ポジティブな情報へすり替えられます。

今回この記事で、育毛剤「チャップアップ」の広告について記述します。この商品は、「日本臨床医学発毛協会」という協会の会長である医師を使って、大々的に広告を繰り広げています。ちなみに今は改善されていますが、過去には「厚生労働省が認めた!生える育毛剤」という完全に薬事法違反の広告を行っていました。

少し脇道にそれますが、日本臨床医学発毛協会ですが、全くこの協会について知らなかったため、少し調べてみました。HPを見ると、そもそもこの協会は、2011年以降活動すらしてないようです。この協会に所属している医療機関(協会認定医療機関)の掲載も1つもありません。また、協会の住所がわかり辛かったため、いろいろサイトページを見てみたところ、やっと見つけました。左側のタブの「協会規約」をクリックすると、最後のページに「 協会の事務局は東京都渋谷区渋谷3-27-15に置く」という記載があります。グーグルマップで調べてみると、その住所には坂上ビルというビルがあり、1階2階はゆうちょが入っています。看板も確認しましたが、日本発毛協会の文字は見つかりませんでした。さらに、何か情報はないかと見てみましたが「プライバシーポリシー」のページには「住所東京都港区港南4−6−5−3103 連絡先:0120-3969-37」の記載がありましたので、電話をしてみましたところ、使用できない番号となっていました。

「チャップアップ 薬事法違反」で検索すると、普通はネガティブな情報が出てくるのですが、アフェリエイターのサイトやチャップアップ宣伝のサイトが上位へ表示されます。「薬事法違反かもしれないけれど、私は実際生えたから、薬事法違反云々よりも、効果のほうが大切です!」のような内容が書かれ、商品購入サイトへのリンクが最後に記述されています。

チャップアップがステマをしていると断定しているわけではありませんが、ネガティブな情報で検索するとアフェリエイトサイトや宣伝サイトが沢山出てくることは事実です。

さて、そんなチャップアップですが、有効成分のセンブリエキス、グリチルリチン酸、ジフェンヒドラミンHCに医学的な見地からみて発毛効果は全くありません。

ここから下はチャップアップのことではなく、一般的な広告業界の話です。

広告業界の友人に聞いた話ですが、最近のアフェリサイトやステマサイトはネガティブな情報を題材にして書き、消費者にネガティブな情報が触れないようにするとのことです。消費者は本当に知りたい情報が得られず、宣伝や広告に騙されてしまう方が大勢います。

育毛ランキングという類のサイトは、昔はほんとにユーザーが、独自の視点で書いていて、それなりに信用できましたし、情報源として活用できたのですが、今はそのほとんどが、アフェリエイトかステマサイトに成り下がってしまい、有用な情報が得られなくなってしまいました。そう言えば、昔の少年誌の広告欄は、「この水晶を買えば、モテモテになる!」みたいな広告で溢れていましたから、媒体が紙からネットに変わっただけで、今も昔も変わらないのかも知れませんね。

書いている人

医師 岩橋 陽介

医師 岩橋 陽介

東京の皮膚科・美容皮膚科「医療法人社団 肌のクリニック」の院長をしています。当院勤務の美容皮膚科医にも時々記事を書いてもらっています。 [医師紹介]

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