AGAブログ | 肌のクリニック・高円寺院・麹町院

AGA治療専門の皮膚科医師のブログです。男性型脱毛症、薄毛、女性のFAGA治療や、発毛と育毛に役立つ知識を、医師の視点から発信しています。育毛業界の裏側や、問題点に対してもメスを入れていきます。

急に髪が大量に抜け始めたら円形脱毛症

time 2017/08/13

突然髪が抜けてしまう

「髪を櫛でとかしていたら、髪の毛が大量に抜けてびっくりしました。」「洗髪の時に髪の毛が手に沢山つくんです。」そんな症状でクリニックへ来院される方がおられます。

髪の毛が短期間に突然抜けるのは「円形脱毛症」です。AGA(男性型脱毛症)や他の脱毛症と違い、ある日急に抜け始めて、数週間~数ヶ月で急速に進みます。

※後に述べますが、当院では自費診療のクリニックのため、原則、円形脱毛症の治療は行っていませんのでご了承ください。

円形脱毛症

円形脱毛症は「10円ハゲ」と言われるように、円形に抜けるというイメージがあるかもしれませんが、実際には円形に抜ける「単発型」や「多発型」だけでなく、髪の毛が全部が抜落ちてしまう「全頭型(ぜんとうがた)」、頭髪だけでなく、眉毛なども含め全身の毛が抜けてしまう「汎発型(はんぱつがた)」、生え際が帯状に脱毛する「蛇行型(だこうがた)」など、様々なタイプがあります。

円形脱毛症の原因は、免疫細胞であるTリンパ球が自身の毛根を攻撃してしまう「免疫異常」とされていますが、なぜTリンパ球が突然毛根を攻撃し始めるのか、なぜ、突然攻撃をやめて回復に至るのかなど、解明されていないことが多くあります。男女年齢問わず発症しますが、アトピーや花粉症、慢性蕁麻疹などのアレルギー体質の方や、他の自己免疫性疾患を持っている方に起こりやすい傾向があります。

また、ストレスが契機になって発症することがあり、ストレスが原因の一つであると考えられています。医学的にはストレスと円形脱毛症の直接的な関係がないとされていますが、実際の臨床ではしばしば関連性を疑う症例を経験します。強いストレスがあってから、1ヶ月~半年後くらいに髪が抜け始めたり、円形脱毛症ができていることに気付く方もいます。その他、出産、疲労、感染症など肉体的なストレスも誘因になります。

ストレス等思い当たるものがまったくなく、アレルギー体質でもないのに起こる方もおり、原因がわからないこともしばしばです。

円形脱毛症の治療法

円形脱毛症は、無治療でも数ヶ月~半年ほどの自然経過で治っていくことが多い疾患ですが、数が増えたり、面積が大きくなってくると不安になると思いますので、皮膚科で治療を行うことをおすすめします。

基本的な治療としては、セファランチンやアレジオンなどの抗アレルギー剤を処方します。また、免疫異常を抑えるため、リンデロンローションなどのステロイドの塗り薬を、脱毛している頭皮にすり込みます。ステロイドの内服や局所注射をすることもあります。

髪の毛がほとんど抜け落ちてしまう「全頭型」や「汎発型」の場合、ステロイドパルス療法を行うことがあります。これは大量のステロイドを点滴で短期間に全身に投与し、免疫を強く抑える治療です。免疫力が一時的に大きく下がるため、入院して行う必要があります。ステロイドパルスは効果が高い治療ですが、発症して6ヶ月以内の症例に限られ、6ヶ月以上経過している場合は効果が出づらくなります(6ヶ月以内の著効率59%に対し、6ヶ月以上の著効率16%)。また、副作用の問題や、再発するケース、持病がありステロイドを使えないケースもあり、患者の希望と併せて、症例を選んで行う必要があります。

局所免疫療法(SADBE療法)は、症状が固定した円形脱毛症の治療に用いられます。SADBE液という人工的に頭皮にかぶれを起こす液体を2週間に1回、脱毛部分に塗布します。すると、頭皮はかぶれてかゆみがおこりますが、このかぶれが自己免疫反応を抑制することがわかっており、60%程度の方に効果を認めます。

その他、光線療法(PUVA療法)、塩化カルプロニウム液(フロジン・アロビックス)、液体窒素療法、ミノキシジル外用なども行われます。

円形脱毛症の経過

円形脱毛症の多くは、1年以内に自然治癒します。しかし、全頭型や汎発型の円形脱毛症の回復率は10%以下と低くなり難治性となります。

全頭型や汎発型への移行は、全患者中15%~25%と報告されていますが、どの治療が全頭型や汎発型への移行を防ぐのか、予防法はあるのか、などはわかっていません。

また、円形脱毛症が起こりやすい体質というものがありますので、一度起こすと再発しやすい疾患でもあります。

円形脱毛症は美容外科やAGAクリニックではなく皮膚科へ

円形脱毛症の治療は、基本的には保険適応になります。脱毛症で検索すると、AGAクリニックなどの美容系クリニックがヒットするため、そちらへ行ってしまう方もいますが、毎月3万円の内服治療や、1回5万円~10万円もする育毛メソセラピーなど、高額な治療を勧められることがあるため、まずは保険治療の皮膚科へ行かれるようにしてください。当院(肌のクリニック)は自費診療のクリニックなので、受付の段階で円形脱毛症の疑いがある方については、近くの保険医療機関に行くように説明しています。

また、時々全頭型や汎発型の症例写真を載せて、治療で改善回復しているように宣伝している美容クリニックがありますが、全頭型や汎発型の予後は悪いものの、無治療でも自然治癒で完全回復する例はありますので、そのクリニックで行われている治療が本当に効果があるのか疑ってかかるべきであると考えます。

いずれにせよ、まずお近くの皮膚科専門医の医師にご相談ください。

書いている人

医師 岩橋 陽介

医師 岩橋 陽介

東京の皮膚科・美容皮膚科「医療法人社団 肌のクリニック」の院長をしています。当院勤務の美容皮膚科医にも時々記事を書いてもらっています。 [医師紹介]

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