AGAブログ | 肌のクリニック

AGA治療専門の皮膚科医師のブログです。男性型脱毛症、薄毛、女性のFAGA治療や、発毛と育毛に役立つ知識を、医師の視点から発信しています。育毛業界の裏側や、問題点に対してもメスを入れていきます。

男性型脱毛症と女性男性型脱毛症の発症機序

time 2018/10/21

今日は、毛の解剖学と絡めて、男性型脱毛症(AGA)と、女性男性型脱毛症(FAGA)の発症機序についてお話しします。

毛の構造

毛を取り囲む組織のことを毛包(もうほう)と呼びます。毛包は一部が盛り上がっており、その部分を毛隆起(もうりゅうき)と言います。毛隆起は、別名「バルジ(bulge)」とも呼ばれています。バルジは英語で「膨らみ」という意味です。この膨らんだ部分全体をバルジ領域と呼び、そこには表皮の幹細胞が存在しています。

成長期の毛根の最下部は球状に膨れていて毛球(もうきゅう)と呼ばれていますが、中に毛乳頭(もうにゅうとう)があります。毛乳頭を取り囲むように毛母細胞(もうぼさいぼう)と黒いメラニンを作るメラノサイトが並び、毛母細胞から毛が発生していきます。

ヘアサイクル(毛周期)

毛は、成長期、退行期、休止期というヘアサイクル(毛周期=もうしゅうき)を、順に繰り返して生え変わります。

成長期では、毛が活発に伸長します。成長期の毛髪は、1日につき0.3mm~0.5mmほど伸びます。1ヶ月に約1センチ伸びると覚えている方もいると思いますが、ほぼ正しいです。

その後、退行期では成長が停止し、休止期に脱落して抜け落ちます。一般に、毛髪の成長期は2~6年、退行期は2~3週間、休止期は3~4ヶ月で、頭髪における割合としては約85~95%が成長期毛、退行期毛が約1%、休止期毛が10%前後です。

成長期に細胞分裂を繰り返していた毛髪は、退行期に移行すると毛包の収縮がはじまって、細胞分裂が停止します。その後、休止期に入ると毛包が毛隆起(バルジ)まで上昇し、毛隆起(バルジ)より下方は退縮します。

毛包は毛乳頭と完全に分離して、その後は、再び成長期に移行し、細胞分裂を再開して下降して毛乳頭を形成して毛母から毛が発生します。この新しい毛に押されて古い毛が抜け落ちます。

この時期の古い毛は、毛の根元が膨らみ、綿棒や棍棒(こんぼう)のように見えることから、棍毛(こんもう)と呼びます。抜け毛のほとんどが棍毛であれば、自然に抜け落ちた毛と言えます。生理的な脱毛は1日50本~100本程度です。

上記の生理的脱毛以上に脱毛が増える状態が続くと、脱毛症を生じます。

ジヒドロテストステロン(DHT)

男性型脱毛症(AGA)は、テストステロンが還元酵素によって代謝されたジヒドロテストステロン(DHT)が原因の一つであることが判明しています。

DHTは、毛乳頭細胞の男性ホルモン受容体に結合します。すると、DHTはTGF-βと呼ばれる毛母細胞の増殖を抑えるタンパク質を誘導します。その結果、毛周期の成長期が短かくなり、しっかりと成長しきれない毛が増え、毛髪が徐々に軟毛化(なんもうか)していきます。

脱毛症の背景として、遺伝的要因や男性ホルモンへの反応性が深く関与しています。

男性の場合、20~40歳代で発症するケースが多いですが、若年発症の場合には10代後半で発症するケースもあります。基本的には思春期以降に発症しますので、思春期前のお子さんに発症することはありません。

AGAは、前頭部(M字)と頭頂部を中心に、薄毛や軟毛化がみられますが、後頭部や側頭部は比較的保たれます。その理由としては、毛乳頭細胞における男性ホルモン受容体の有無や5α還元酵素の活性の違いによります。

つまり、前頭部や頭頂部は、DHTに対する感受性が高く、側頭部や後頭部は低いため、AGAでは前頭部や頭頂部を中心に抜け毛が多く認められるわけです。

そのため、植毛治療では、男性ホルモンの影響を受けにくい後頭部の毛組織を頭頂部やM字などの気になる部位に移動させて治療を行います(当院では植毛治療は行っていません)。

ちなみに、髭にも男性ホルモン受容体は存在しますが、DHTが結合すると成長因子などを誘導し成長期が延長します。前頭部や頭頂部の毛髪と、髭は、DHTに対して逆の反応を示すのは、なんだか不思議ですが、実際に、薄毛でも髭が濃い方は沢山おられます。

余談になりますが、先日、「ミノキシジルトニックを髭に試しに塗ってみたけど髭は増えなかった」とおっしゃっている患者さんがいらっしゃいました。

ミノキシジルが発毛を促す作用機序としては、完全に解明されてはいませんが、KGF、IGF、HGF、VEGF、FGF、プロスタグランジン系列などの成長因子の賦活作用と考えられており、DHTの抑制効果はありません。

ミノキシジルには外用(塗り薬)と内服(飲み薬)の2種類があり、ミノキシジルの飲み薬を飲んでいる方は、髪の毛だけでなく、髭、眉毛、まつ毛を含めて、すべての体毛が伸びるという方も多くおられます。塗り薬の場合は、頭髪の生え際付近に広く塗布されている患者さんの場合、額にも産毛が生えてくる方もいらっしゃいます。

基本的には、ミノキシジルはどの部位の毛に対しても発毛作用があると考えられていますが、個人差があり、また、外用剤の頭皮以外への塗布は、肌荒れ等の副作用が出ることがあるため、積極的にお勧めはしていません。

ミノキシジルの飲み薬のAGAに対する効果については「ミノキシジルタブレットの発毛効果」をご参照ください。

女性の男性型脱毛症

話を脱毛症に戻します。

男性型脱毛症の場合、先程お伝えしたとおり前頭部と頭頂部に脱毛症を認めますが、女性でも同様に、頭頂部や前頭部に脱毛症を認めるケースが多くあります。男性同様にDHTが原因とされており、女性男性型脱毛症(FAGA)と呼ばれます。

男性型脱毛症の場合は、フィナステリドやデュタステリドなど、DHTを抑える薬を軸に治療を行っていきますが、女性の場合はフィナステリドやデュタステリドの内服はできません。正確には、フィナステリドが女性にも有効であることは示されていますが、どのような副作用が起こるかが明らかでないため、禁忌(きんき=使ってはいけない)とされています。

そのため、当院では男性ホルモン受容体をブロックする効果のある「スピロノラクトン」という内服薬を使って、治療を行っていきます。

また、女性ホルモンを補充することで症状の改善を認めるケースも多いため、閉経前の女性であれば、低用量ピルやミニピルを処方することもあります。

薄毛治療では、脱毛を抑えるお薬と一緒に、発毛させるお薬を併用したほうが効果が高まるため、FAGAの治療でも、発毛薬のミノキシジルを併用して使います。

前述したように、ミノキシジルの飲み薬の場合は、体毛が増加するため、特に女性患者さんの場合、気にされることが多いため、まず塗り薬から使用していただくことがほとんどです。

ちなみに、血液検査中の男性ホルモン値(テストステロン、ジヒドロテストステロン等)は、AGAの人と健常人では特に変わらないため、AGA診断に有用な血液検査はありません。また、AGAの遺伝子検査がいかに適当なものかは、「AGA遺伝子検査の信憑性はあるの?」をご参照ください。

ただし、女性の脱毛症の場合、症状の背景としてPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)といった病気が背景にあることもあるため、疑わしい症状があればホルモン検査を行うこともあります。

以上、今回は副院長の涌水がブログを担当しました。薄毛や脱毛症についてご相談あれば、是非お気軽にご来院ください。

書いている人

医師 岩橋 陽介

医師 岩橋 陽介

東京の皮膚科・美容皮膚科「医療法人社団 肌のクリニック」の院長をしています。当院勤務の美容皮膚科医にも時々記事を書いてもらっています。 [医師紹介]

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