AGAブログ | 肌のクリニック・高円寺院・麹町院

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ヘアマックスなどの低出力レーザーってAGAに効果あるの?

time 2017/09/25

低出力レーザーのAGAに対する効果は?

ちょっと今さら感もある話題で恐縮ですが、AGAに対するヘアマックスなどの低出力レーザー機器の効果についての私見です。

AGA用の低出力レーザー機器には「ヘアマックス・HairMax」、「アイグロー・iGrow」、「セラドーム・theradome」などの機種が発売されています。

ヘアマックスはアメリカで10年以上前から家庭用治療器として販売されてきました。最近患者さんに「ヘアマックスってほんとに効果があるんですか?」と立て続けに質問されたため、記事にしてみました。

当院では初診時の問診票に「過去の治療歴」を書く欄があり、そこにヘアマックスと書いていた患者さんは、過去50人くらいはいたと思います。ちなみに、私が患者さんに聞いた限りでは、当院に来院された患者さんで低出力レーザーで改善した方(維持レベルも含めて)は一人もいません。

ただし、クリニックに来る患者さんはAGA治療のために来院されますので、もしヘアマックスで改善していれば来ないはずですから、バイアスがかかっているのは確かです。

また、私に言っていないだけで、患者さんの中にヘアマックスが効いているという人が存在しているのかもしれません。なので、ヘアマックの効果はないと言っているわけではありませんし、いつくかの論文では、効果も報告されているため、効果を完全に否定しているわけではありません。

しかし、私はヘアマックス等の低出力レーザーが、本当に「業者が宣伝しているほど」AGAに効果があるのかは懐疑的です。

FDAが認可?承認?

低出力レーザー機器の輸入販売会社やアフェリエイトサイトは「低出力レーザーはFDAに認められた効果!」「FDAに承認!」「FDAの厳しい審査をクリア!」などという宣伝文句で販売する手法を取っています。

しかし、このFDA承認という表現は、非常に曲者です。本国アメリカでもこの宣伝方法を批判する記事や意見が多数見られます。

一部の広告記事によると

「FDAに認められた薄毛治療は3つだけです。その3つとは、フィナステリドとミノキシジルと低出力レーザーです。その中でもっとも効果が高く、副作用がないのは低出力レーザーだけです。」

「フィナステリドやミノキシジルよりも高い効果があり、なおかつ副作用がゼロです。」

などと書かれていますが、本当でしょうか?

フィナステリドやミノキシジルよりも効果があるって本当?

まず、フィナステリドとミノキシジルはFDAに「PMA」という最も厳しい試験をパスして認可されています。審査内容にはFDA監視・規制のもと行われる二重盲検・臨床試験が含まれます。(Approvalと表記されます。)

低出力レーザーは「510(k)」と呼ばれる医療機器に関しては最低条件の認可です。(Clearanceと表記されます。)米国の90%の医療機器は、この510(k)のハードルをクリアして認可されています。

この510(k)は、過去にすでに市販されている機器と、実質的に同等の技術・安全性・有効性がある場合に認められます。ちなみに、ヘアマックスの初代のレーザーコーム(レーザーを発するくし)は、510(k)認可を取るために、シラミを殺すためのレーザー装置を含む他のレーザー機器と同等の安全で効果的であると主張して、認可を取っています。

「現在はAGAに対する認可を取っている!効果も認められている!」と主張する業者もいるでしょうが、AGAに有効だという臨床データを提出すれば、510(k)認可は取れますので、現在のモデルにおいては、製造会社はそのような手続きをしたはずです。

しかし、この臨床データというのは、PMA認可とは異なり、FDAの厳しい規制下で行われるものとは異なります。アメリカでも、低出力レーザーのAGAの効果に関する臨床データは「独立したものではないのではないか」として懐疑的に見る意見もあります。

同じFDA承認・認可でも、PMA認可(Approval)と510(k)認可(Clearance)では異なります。510(k)認可は、過去に販売されていた機器と同等の安全性・効果があると示すことができれば、認可がおりるので、医療機器としては最低条件のハードルです。FDAがその効果を確実に保証しているわけではありません。

低出力レーザー機器の誇大広告

「髪がふさふさに!」「フィナステリドやミノキシジルよりも高い効果!」などの広告表現や宣伝文句は、どうなんだろう?と思います。

また、フィナステリドやミノキシジルの副作用を過度に強調し、消費者の不安を煽って「医薬品は怖いから安全なレーザーで治療しましょう。」というやり方で宣伝している業者もいます。

もちろん医薬品ですから、抗生物質や風邪薬、解熱鎮痛剤などにも重篤な副作用があるように、フィナステリドやミノキシジルにも重篤な副作用はあります。ただし、副作用の発現率が他の薬と比較して異常に高いかと言うと、むしろ低い部類に入るかと思います(この辺りは臨床医を長年行ってきた経験で書いていますが、異なる意見もあるかもしれません)。

AGAは絶対に治療しなければならない疾患ではありませんから、副作用のリスクと得られるメリットとを天秤にかけて治療を行うかどうか選択する必要がありますから、副作用が怖ければ治療をおすすめすることはありません。

しかし、副作用の発現率(パーセンテージ)や内容を正しく理解した上で、正しく怖がるのであればよいのですが、過度に副作用を強調して自社製品に誘導するやり方をするのは、正しい方法ではありません。

効果についても、実際にAGA治療を行っている医師で、低出力レーザーがフィナステリドやミノキシジルを超える効果があると思っている医師はあまりいないのではないでしょうか。

少なくとも私が会った医師の中には一人もいませんが、検索しても低出力レーザーを積極的に治療に取り入れているクリニックはごくわずかであり、ほとんど出てきませんでした。

アメリカ脱毛症協会(The American Hair Loss Association)は、低出力レーザーをAGA治療に推奨しておらず、レーザー機器の宣伝をしている医師を除くと、アメリカで低出力レーザーの効果について懐疑的な意見を述べている医師は多くいます。

QVCのヘアマックスに対する口コミレビューは★5つと★1つの数が突出しており、HairMax Lux 9 Hair Growth LaserCombのレビュー476件のうち、★5は198件、★1は170件と両極端になっています。私が思うに、フィナステリドやミノキシジルよりも効果があるのであれば、こんな口コミレビューにはならないのではないかと考えます。

ハゲる人はハゲる」でも書きましたが、禿げる人は遺伝的に決まってしまっています。レーザーを当てるだけでそれが治せれば素晴らしいことですが、私の知りうる限りは、残念ながらそのようなことは起こっていません。

※アイキャッチ画像出典 : 10 Most Promising Hair Loss Cure and BaldnessTreatments for the Year 2020 and Beyond
URL:http://hairlosscureguide.com/10-most-promising-hair-loss-cure-and-baldnesstreatments-for-the-year-2020-and-beyond/

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書いている人

医師 岩橋 陽介

医師 岩橋 陽介

東京の皮膚科・美容皮膚科「医療法人社団 肌のクリニック」の院長をしています。当院勤務の美容皮膚科医にも時々記事を書いてもらっています。 [医師紹介]

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