2018/10/21
ノンシリコンシャンプーの医学的根拠
AGA用のシャンプーのことを良く患者さんから聞かれますが、はっきり言って「どれも同じですよ」と答えています。ノンシリコンだろうが、シリコン入りだろうが、AGAには関係ありません。ノンシリコンシャンプーを使ったからと言って、薄毛が治る、もしくは改善するという医学的根拠はありません。
それなのに、かなりの患者さんが「薄毛にいいノンシリコンシャンプーを使ってるんですけどね。全然変わりません。」と言います。そりゃそうです。効果ないんですから。ノンシリコンシャンプーの業者の宣伝戦略に、まんまと乗せられてしまっています。ノンシリコンシャンプー業者は、直接「薄毛が治る。」とは絶対に言いません。治らないのに治ると謳えば薬事法違反になりますから。
その代わり、ステマサイトやランキングサイトを作りまくって、消費者の体験談として「抜け毛が減った!」「髪が生えてきた!」と宣伝します。また、専門的知識が乏しい美容師(※)に「シリコンは悪。ノンシリコンが善。」ということを教え、ノンシリコン信者にします。美容師は、身近に存在する「髪の専門家」ですから、「美容師が言うなら、間違いない!」と、消費者は思い込んでしまいます。
そして、シャンプーの成分に「グリチルリチン酸ジカリウム」などを配合して、「育毛作用」を謳えば完璧で、飛ぶように売れていきます。化粧品や医薬部外品の広告は、「この成分を使用したらこの効能を表示して良い。」という決まりがあって、グリチルリチン酸2Kを配合すると、「育毛」という表記を使用して良いことになっています(他にも育毛作用を宣伝できる成分があります)。ネットでの評判はいいし、美容師は勧めるし、公式サイトにも育毛作用と載っているし、ノンシリコンシャンプーは、髪にいいに違いない!と思ってしまいます
※美容師のことを悪く言っているのではなく、美容師は、一般的な人が思っているほど薄毛に関する知識が豊富なわけではないということです。もちろん、勉強熱心で知識が豊富な美容師も中にはいますが、そういう美容師は、販売促進という意味でノンシリコンシャンプーを推奨はするにしても、盲目的に推奨することはないはずです。
あとはCMを使ったり、美容系の医師を使って、「芸能人も使っているから、いいのだろう。」「医者と研究してるなんて、すごい。」というイメージ戦略を拡大していき、この10年でノンシリコンシャンプーの売上はどんどん伸びていきました。
ちなみに、某スカルプDを販売している某アンファーは、売上を10倍・100億円規模にまであっという間に成長させました。最近では、ネットでネガティブな情報も目立つようになり、売上は鈍化しています(2014年までの売上高しか会社側が開示していないため、2015年以降は不明ですが、2013年の脱税事件を契機に、2014年は売上は微増にとどまっています)。ちなみに、アンファーが上記のことをやっていると断定しているわけではなく、単に、ノンシリコンシャンプー時代の成長企業としての一例で、記述しています。
石鹸シャンプーか湯シャンで十分
以前の記事「AGA治療におけるケトコナゾールシャンプー」で書いたように、AGA患者へは、医薬品であるケトコナゾールが2%配合されたシャンプーをおすすめしています。唯一、エビデンスがある(といってもC1レベルですが)シャンプーで、脱毛抑制に作用するのは、ケトコナゾールシャンプーのみです。
それ以外では、純石鹸のミヨシやパックス、シャボン玉石鹸などのメーカーが出している、石鹸シャンプーで十分です。多少髪は軋みますが、きちんとすすげば、市販のシャンプーよりは、ずっと頭皮には優しいと言えます。もっと言えば、頭皮の皮脂等が気にならない方では、お湯でしっかり揉み洗いする「湯シャン」だけで十分です。ただ、皮脂が多く、頭皮のベタつきが気になる方や、整髪料を使う方は、湯シャンだけでは落ちないため、石鹸シャンプーや、ケトコナゾールシャンプーを使用するのが良いでしょう。