AGAブログ | 肌のクリニック・高円寺院・麹町院

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ミノキシジルの副作用 心血管系副作用を中心に

time 2015/03/05

大正製薬のリアップ®が日本で発売されてから、発毛剤としてのミノキシジルは、日本でも急速に認知度があがりました。もともとはアメリカで、血管拡張作用がある降圧剤の飲み薬として開発された薬ですが、薬を飲んでいた患者さんの髪や体毛が濃くなったことで、発毛剤として使われる様になりました。降圧剤としての処方は、現在はされていません。理由としては、ミノキシジルを飲んでいた患者さんに、狭心症発作や動悸などの心臓系の副作用が出るようになったためです。少し医学を知ってる人なら、なぜ血管拡張薬なのに、狭心症を引き起こすの?と疑問に思うかもしれません。狭心症というと、心臓に栄養を供給している冠動脈が狭くなって、血流(酸素)が足りなくなって起こる心臓の痛みです。血管を拡張させるなら、冠動脈も拡張するから、狭心症はむしろ良くなるのでは?と思うのも当然です。この理由は、ミノキシジルの血管拡張作用は主に動脈に起こり、静脈には作用しないことに起因します。血液の流れは、心臓→動脈→静脈→心臓へと戻ってきますから、動脈が拡張されて増えた血流量は、通常拡張された静脈によって緩衝されますが、静脈の拡張がないために、一気に心臓へ血液が流れ込み、心拍出量が異常に増加します。心拍出量が異常に増加するという状況は、心臓はたくさん働いている状況なので、酸素を多く消費しますが、その酸素が冠動脈からの酸素だけでは相対的に不足してしまい、狭心症発作が起こります。冠動脈が狭くなって心臓の酸素が足りなくなる狭心症もあれば、心臓が働き過ぎて酸素供給が追いつかずに起こる狭心症もあるということです。また、ミノキシジルの血管拡張作用により、一気に血圧が下がると、脳が血圧を保とうと、反射的に血圧を上昇させる働きのある交感神経を緊張させます。そうなると、さらに心拍出量は増加し、鼓動は早くなり、狭心症や動悸、不整脈が起こりやすくなります。そして、心拍出量が多いまま一定の期間続くと、心臓の筋肉がどんどん大きくなる心肥大が起きます。心筋が肥大すると、逆に力強くなっていいのではないか?と思われるかもしれませんが、肥大した心臓はより多くの酸素を消費しますので、相対的に酸素不足に陥り、酸素が足りなくなった心臓は、最終的に心不全という状態となり、本来の機能を果たせなくなってしまいます。

その他にもミノキシジルタブレット(飲み薬)には、全身の多毛、赤ら顔、低血圧、反射性高血圧、腎性全身線維症(腎不全、皮膚の硬化、関節拘縮をきたし、身体機能障害に陥る病気)、高カリウム血症、多臓器不全等があります。これだけ副作用が多いため、もっといい降圧剤がある現在は、降圧剤としてのミノキシジルは役目を終えたわけです。そして、発毛剤へと応用されたのですが、実は発毛剤としてもミノキシジルタブレット(飲み薬)を認可、推奨している国はありません。認可されてるのは、あくまで副作用の少ない外用剤だけになります。飲み薬であるミノキシジルタブレットを処方されている方は、きちんと医師の説明を受け、メディカルチェックを受けた上で飲むことが大切です。副作用が強い薬ですから、メディカルチェックは、最低半年に1度、BNPを含む血液検査、心電図、尿検査(微量アルブミン)を行い、心電図で心肥大の所見が認められていたり、変化があれば心臓超音波等の検査が必要です。

局所投与(外用剤)にしたら副作用が少なくなるのではないかと開発されたのが、アメリカのミノキシジル製剤、ロゲイン®です。その後、大正製薬からリアップ®として日本でも発売されましたが、外用剤での副作用は頭痛(血管拡張作用による)や痒み、発赤などが主なものになります。また、直接関連性ははっきりしないものの、やはり外用剤でも経皮吸収後に血中から全身へ薬剤が流れ、動悸や胸痛などが引き起こされた例も報告されています。(大正製薬ミノキシジルの動悸と胸痛について。)副作用とみられる(疑われる)症状があった場合には、一旦使用を中止し、医師、薬剤師へ相談していただくのが良いかと思います。

外用剤で、もっとも頻度が高い副作用の一つである痒みですが、添加されているエタノールやミノキシジル自体へのアレルギーの可能性があります。しかし、その多くは一緒に添加されているプロピレングリコール(PG)という成分が原因です。PGは、防腐性、防カビ性に優れているので、製剤の乳化剤や保湿剤として長期間に安定な状態を保ちます。PGは乳化作用(水と油を混ぜ合わせる作用)があります。頭皮の皮脂膜や皮膚の細胞膜は脂溶性ですから、この乳化作用により、油である皮膚と水であるミノキシジルを混ぜあわせ、経皮吸収を促進します。いくらミノキシジルを塗っても、毛乳頭がある真皮へ到達しなければ意味がありませんから、ほとんどの製品にはPGが添加されています。ただ、それ以前にPGに対してかぶれや痒み、アレルギーが起きたのでは、使用すらできませんから、最近はPGフリーのミノキシジルも発売されています。リアップにはPGは入っていますが、リアッププラスやX5にはPGが省かれていますので、リアッププラスやX5でかぶれてしまう人は、エタノールが原因かもしれません。エタノールフリーの商品もありますが、代わりにPGが使われています。またエタノール、PGともに配合量を1%以下にしている商品もあります。どれが自分に合ってるかはいろいろ試してみるのが良いかもしれません。

※このページがなぜか無断でチャップアップのステマサイトへ引用されていました。ミノキシジルは危険→チャップアップは安全なのでお勧め!という図式になっていました。「おかしな育毛ケア用品たち」で記述しているように、当院ではチャップアップを推奨しているわけではありませんので、ご注意ください。

※当ページは、ミノキシジルの副作用について書いていますが、特に外用剤については全世界で使用されており、副作用が起こる率は高くありません。また、少なくとも化粧品や医薬部外品(チャップアップ等)よりはしっかりとした臨床データがあり、発毛剤として信頼できます。

 

書いている人

医師 岩橋 陽介

医師 岩橋 陽介

東京の皮膚科・美容皮膚科「医療法人社団 肌のクリニック」の院長をしています。当院勤務の美容皮膚科医にも時々記事を書いてもらっています。 [医師紹介]

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