2018/10/21
成長因子(GF グロースファクター)は、別名再生因子、細胞増殖因子とも言われます。その名の通り、細胞の成長、分化、増殖に関わっている蛋白のことです。広義にはホルモンやサイトカインも成長因子として扱われます。
今回は線維芽細胞増殖因子(FGF)についてです。詳しい内容はwikiに任せるとしまして、ここではごくごく基本的なことを書いていきます。
線維芽細胞増殖因子(FGF)はその名の通り、線維芽細胞という細胞を増殖する成長因子です。(その他にも様々な神経細胞や組織の分化増殖成長に役だっています。)線維芽細胞とは、全身の結合組織に存在する細胞で、真皮のコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンを作り出す細胞です。
FGFには23種類もの種類があります。ここではAGA治療に重要と思われるFGFの働きを考えてみます。
まずは有名なFGF7です。FGFファミリー23種類の内のナンバー7ですが、別名ケラチノサイト増殖因子(KGF、ヒトオリゴペプチド-5)と呼ばれています。分子量は18,900なので、ヒアルロン酸(分子量100万)と比較しても、相当小さい蛋白です。
FGF7のAGA治療における役割ですが、毛母細胞(もうぼさいぼう)という髪の毛を作り出す細胞の分化、増殖を促進します。有名な毛生え薬のリアップやロゲインは、ミノキシジルを主成分としていますが、ミノキシジルの発毛作用機序は、血管拡張とVEGF(血管内皮細胞増殖因子)の産生を促進することによる血流増加と、FGF7産生を促進することによる毛母細胞の分裂、増殖を促すことによるものとされています。(未だに正確な作用機序は不明な点も多いのですが。)
また、資生堂が発売しているアデノゲン®は、アデノシンを主成分としていますが、アデノシンがFGF7産生を高めて、発毛を促進することが同社の研究で分かっています。
資生堂「アデノシン」開発のニュースリリース
しかし、臨床ではミノキシジルやアデノシンの有効性は今ひとつです。ミノキシジルに関しては、極初期であれば有効性は非常に高いのですが、米国の臨床試験では著名な効果があった患者は0.7%、中等度またはわずかな効果があった患者は30%程度となっています。その後の比較試験では、5%濃度で9割以上の患者さんに効果があったという結果もありますが、著明な改善はやはり1割程度となっています。それでも日本では唯一発毛効果があると認められた成分であり、男性型脱毛症診療ガイドラインでは推奨度はAランクとなっています。また、アデノシンに関しては、推奨度はC1と微妙な評価です。(ミノキシジルの有効性。)
ミノキシジルやアデノシンの効果がぱっとせず、そもそもそれらは、FGF7の産生を高めて効果を発揮するのであれば、直接FGF7を使用すれば良いのではないか?と誰しも考えるのですが、ここにも様々な問題があります。それに関しては、また書きます。