2018/10/21
ケトコナゾールシャンプーとは
ケトコナゾールという抗真菌薬が配合されたシャンプーは、AGA治療の補助としては使用したほうがよいでしょう。商品名は、ニゾラールシャンプーやニナゾルシャンプーで販売されていますが、残念ながら日本ではケトコナゾールが医薬品のため、薬局では購入できません。
扱っている病院がお近くにあれば処方してもらうのがよいでしょう。当院では「ニナゾルシャンプー」を処方しています。
ケトコナゾールが2%配合された「ニゾラールローション」や「ニゾラールクリーム」は、シャンプーの形ではありませんが、水虫(白癬菌)などに保険適応が通っているため、ニゾラールローション、ニゾラールクリームという薬品名で、全国どこの病院でも処方可能です。
しかし、ニゾラールローションは10mlと容量が小さく、頭皮全体に塗るとすぐになくなってしまうので、やはりシャンプー製剤が最も使いやすいと思います。
ケトコナゾールのAGAへの効果
ケトコナゾールのAGA治療における効果ですが、ある美容外科のHPに「1998年には2%ケトコナゾールシャンプーと2%ミノキシジル外用薬の効果は同等という論文が発表されている。」という誤った情報が書かれているため、それが転用されて色々なサイトに、同様の書き込みが見られます。根拠となっているその論文ですが、1998年にケトコナゾールについて発表されているのは下記のものしかないので、下記の論文のことを言っているのだと思います。
ケトコナゾールシャンプー:長期使用によるAGAへの効果(Ketoconazole Shampoo: Effect of Long-Term Use in Androgenic Alopecia)
この論文の中では、ケトコナゾール2%配合シャンプー(ニゾラールシャンプー) VS 無配合のシャンプー(ビダルサスーンのシャンプー)を使用した比較試験(study1)と、ニゾラールシャンプー VS ビダルサスーン+ミノキシジル2%の比較試験(study2)が行われています。
ただ、この試験の目的としては毛幹の太さ(毛の太さ)と皮脂腺の面積を調べているだけであり、AGA治療において最も大切な、発毛率(毛髪数)は含まれていません。
結果として、毛幹の太さはニゾラールとミノキシジルでは同等程度太くなっていますが、皮脂腺の面積はニゾラールは19.4%減少、ミノキシジルは5.3%増加という逆の結果となりました。
皮脂腺の面積がニゾラールで減少したのは、ニゾラールの抗男性ホルモン作用(抗DHT作用)の作用によるものです。皮脂腺の減少=発毛率ではありませんのでご注意ください。
ミノキシジルでは逆に皮脂腺の面積が増加しています。ミノキシジルは、抗男性ホルモン作用によって発毛を促進するのではなく、成長因子のシグナルを介して発毛を促進するため、皮脂腺の面積は増加し、発毛も促されます。
ケトコナゾールの抗男性ホルモン作用は、発毛ではなく脱毛の抑制という作用がメインです。ケトコナゾールとミノキシジルはまったく作用機序が異なりますし、AGA治療において「効果が同等」とも言えません。
この論文でも、ミノキシジルと効果が同等であったなどという結論にはなっていませんし、AGA治療ガイドラインにおいてもそのような評価はされていませんので、このミスインフォメーションは、ケトコナゾールを扱う業者などが論文も読まずにどんどん転用していき、拡散されたのだと思います。ネットではよくあることですが。
ただ、ケトコナゾールに関しては、発毛までの強い効果はないにしても、脱毛の抑制作用があるのはいくつかの研究で明らかになっていますので、他のAGA治療薬と併用すべき薬剤の一つです。
男性に対してはいくつかの小規模な比較試験で、脱毛の改善が認められており、臨床でも頭皮の脂漏性皮膚炎や痒みに効果を認めます。ガイドラインでは推奨度C1(用いても良い)というレベルですが、脱毛抑制に働くシャンプーとしては、唯一医学的根拠があるものであり、当院でもAGA患者さんや、頭皮のフケ、痒みが気になるという患者さんに勧めています。
ちなみに、市販品ではコラージュフルフルという抗真菌薬の硝酸ミコナゾールを0.75%配合しているシャンプーがあります。ミコナゾールはケトコナゾールと同じ抗真菌剤ですが、構造式が異なります。
コラージュフルフルに含有されている0.75%という濃度では抗菌作用はほとんどなく、静菌(菌がふえないように維持する)作用が主となります。皮膚に有害なトリクロサンなども配合されており、AGA治療には効果は低いと考えられますので、あまりお勧めできません。